中国軍機が領空侵犯「極めて重大」 活動エスカレート、NATO牽制の意図も

領空侵犯した中国軍のY9情報収集機=26日、東シナ海上空(防衛省統合幕僚監部提供)

防衛省は26日、中国軍機による領空侵犯を初めて確認した。近年、中国の艦艇や航空機による日本領海・領空周辺での活動は常態化している。同省は今回の領空侵犯を「極めて重大に受け止めている」とし、飛行の意図を分析するとともに、引き続き警戒監視に万全を期す構えだ。

同省統合幕僚監部によると、領空侵犯の恐れがある外国機に対する航空自衛隊戦闘機による緊急発進(スクランブル)の回数は令和5年度、669回で、そのうち中国が479回。全体の約72%に上った。

中国機の活動範囲は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺のほか、最近は九州西方沖で無人機の飛行が目立つようになっている。今回、長崎沖の領空にまで有人の中国軍機が侵入してきたことで「中国がさらに活動をエスカレートさせた可能性がある」(自衛隊幹部)。

今回の領空侵犯は、インド太平洋地域で日米両国に同調する北大西洋条約機構(NATO)加盟国などの軍の動きが活発化しているのを牽制(けんせい)した可能性もある。

6月以降、米海軍が主催する環太平洋合同演習「リムパック」に合わせ複数のNATO加盟国が軍艦を太平洋に派遣。今月22日には、F35B戦闘機を搭載するイタリア海軍の空母「カブール」が初めて日本に寄港した。

日中間では平成30年に、自衛隊と中国軍の偶発的衝突の回避を目的とする相互通報体制「海空連絡メカニズム」の運用が始まった。昨年5月には防衛当局幹部間を直結するホットラインも開設した。

ただ、中国軍による活動のエスカレートは偶発的な衝突に発展しかねない。日本としては対中抑止力を高めると共に、不測の事態回避に向け、日中防衛当局間の意思疎通をより一層強化する考えだ。(小沢慶太)

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