台風10号 寒冷渦に引っ張られ西へノロノロ、影響長期化警戒 「気圧の谷」今後の動きに影響か

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産経新聞

日本列島のはるか南のマリアナ諸島で22日に発生した台風10号は、太平洋上を真っすぐ北上し、近畿方面を直撃するとみられていた。だが突如、進路を西に変え、ノロノロと進んで九州南部へ接近している。進路予想を覆し〝迷走〟した大きな要因は、洋上に張り出した太平洋高気圧に加え、「寒冷渦(かんれいうず)」と呼ばれる低気圧の存在。今後は気圧の谷の影響で陸地での雨や風が長引く恐れもあり、気象庁や専門家が警戒を呼びかけている。

■動きが変則に

寒冷渦は周囲に反時計回りの風の流れを持っているため、台風が引き寄せられ、動きが変則的になりやすい。

今回は北へ進んでいた台風が、列島の南側に張り出した太平洋高気圧に進路を阻まれたうえ、九州・四国南部の海上にあった寒冷渦に引っ張り込まれた結果、動きが西へ転じたとみられる。

京都大防災研究所・横浜国立大の伊藤耕介准教授は「たまたまその海域にいる寒冷渦が台風を動かすことがある。数年に一度だが今回はそのケースだ」と指摘。寒冷渦の存在をあらかじめ正確に把握できなかった点については、「寒冷渦は高度約10キロにあるため観測が難しい」とした。

■海水温の上昇で勢力拡大

台風10号は27日、非常に強い勢力に発達し、奄美などの一部を暴風域に巻き込みながら西寄りに進んだ。

伊藤准教授によると、台風が進んだ九州・四国沖の海水温は例年よりも1~2度高い約30度に達している。海水面の温度が1度上がるごとに発生する水蒸気はおよそ7%増えるとされ、海水温の上昇が勢力の拡大を招いたとみられる。

西日本から東日本の太平洋側では今後、24時間に300ミリ以上の雨が予想され、奄美では28日にかけて線状降水帯が発生する恐れもある。

■最新情報の確認を

ノロノロと西寄りの進路をとる台風はいつ、北から東寄りへと転じるのか。

今後の進路に大きく影響するとされるのが、日本海上空に張り出す「気圧の谷」だ。

台風を偏西風で東へと押し出す働きをするとされており、気圧の谷が台風に向けて南下すれば、北から東寄りに進路を変えるのが早まるとみられる。

偏西風の力が弱いままだと、台風が長期にわたり九州方面にとどまる恐れがあり、海からの風を受けた陸地が大雨などの被害に長期間さらされる危険性が高まる。

伊藤准教授は「長期にわたり大量の雨が降る可能性もある。河川の氾濫やがけ崩れなどの被害を警戒し、必要に応じてハザードマップなどを確認すべきだ」と指摘。進路予報の不確実性が大きいことから、気象庁では最新の情報を常に確認するよう求めている。(五十嵐一、岡嶋大城)

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