ロシア防空ミサイルが「ドローン迎撃」に失敗…直後に「直撃弾」をくらう緊迫の映像をウクライナ公開

Mike Mareen/Shutterstock 記事から引用
ニューズウィーク日本版

<ドローンやミサイルを迎撃する能力を持つロシアの防空ミサイルシステム「Tor」は、何度もウクライナ軍による攻撃の標的になってきた>

ウクライナ軍のHIMARSによる攻撃が、ロシアの防空ミサイルシステム「Tor」を撃破する様子を捉えたとみられる動画が公開された。動画はウクライナ軍ドローンから撮影されたもので、まずはTorから発射された防空ミサイルがカメラの目の前をかすめて飛んでいくが、「迎撃」に失敗したTorは逆にHIMARSの直撃弾を受けて爆発・炎上する。

今月、この35秒間の空撮動画を最初にテレグラム上で共有したのは、ウクライナ軍戦略通信センターで、ウクライナ軍のドローンがロシアの携帯式短距離ミサイルシステム「Tor」から発射されたミサイルをかわす様子を捉えたものだとの説明が添えられていた。

ウクライナ国防省は12日、ウクライナ軍無人航空システム第14連隊が高機動ロケット砲システム(HIMARS)を使用してロシア軍の防空ミサイルシステム「Tor」を攻撃し、破壊したと発表した。本誌はこの動画の信ぴょう性について独自に確認することができず、ロシア国防省にメールでコメントを求めたがこれまでに返答はない。動画の撮影時期および撮影場所は明らかになっていない。

■ロシア軍の兵士たちもHIMARSの餌食に

アメリカからHIMARSの供与を受けたことで、ウクライナはロシア軍の最新鋭対空ミサイルシステムを破壊することができるようになった。HIMARSは3年目に突入しているウクライナとロシアとの戦闘において広く使用されており、戦闘開始以降、アメリカ政府はウクライナに少なくとも39基のHIMARSを供与している。

ウクライナがこれまで何度も標的にしてきたロシアのTorシステムは、航空機やドローン、誘導ミサイルやその他の精密兵器を撃墜する能力を持っている。ロシアの国営タス通信は2023年2月に軍事専門家の発言を引用する形で、改良型のTor-M2は動いているドローンや「その他の複雑な空中目標」を破壊することができると報じた。

ウクライナ軍はまた、西側諸国から供与を受けたHIMARSを使用してロシア軍の部隊を攻撃したとも報じられている。実際にウクライナ軍は6月、ロシア占領下のウクライナ南部で森に潜むロシア兵たちをHIMARSで攻撃したと発表した。

ウクライナ軍特殊作戦部隊(SSO)は当時テレグラムへの投稿の中で、「第73海上特殊作戦部隊のドローン要員が南部方面で偵察を行っていたところ、ロシア軍の兵士たちが集まっている場所を見つけた」と述べ、攻撃の様子を撮影した動画を共有。投稿はさらに「SSOはロシア軍の兵士たちが集結していた南の区域を狙い、HIMARSで攻撃を行った」と述べて、こう続けた。「この結果、ロシア軍は甚大な損失を被った」

■訓練場に直撃したHIMARS攻撃ではロシア兵60人が死亡

また2023年10月には、HIMARSがロシア軍の大隊を攻撃した後の様子を撮影したとされる動画が公開された。

オープンソース・インテリジェンスを活用したウクライナのウェブサイト「DeepState」はこの時の攻撃について、ロシア軍の占領下にあるウクライナ南部ヘルソン州のポド・カリニウカ村近郊の訓練場を標的としたものだと分析した、英BBCのロシア語サービスもウクライナ軍特殊部隊の関係者から得た情報を引用し、同訓練場を狙った攻撃が行われたと報じた。

ウクライナの新聞「Zarkalo Nedeli」は当時、この攻撃でロシア軍の兵士少なくとも60人が死亡したと報じた。

イザベル・バンブルーゲン

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