北海道観光地で「道民割」を試行へ…インバウンド増で宿泊代が高騰、「二重価格」導入で対策

読売新聞オンライン

 インバウンド(訪日外国人)需要の増大に伴って高騰する宿泊代などの観光関連価格を受け、北海道観光機構の小金沢健司会長は、道内客向けに割安な料金を設定するよう会員企業や団体に呼び掛ける。事実上の「二重価格」の導入で、今秋の試行を目指して取り組みを促す。専門家によると、人気観光地での組織的な取り組みは珍しいという。

 読売新聞が行った小金沢会長と鶴雅ホールディングスの大西雅之社長(前日本旅館協会会長)の対談で明らかにした。

 大西社長は、春の大型連休でニセコなど一部地域で日本人客の減少が顕著だったとし、観光地離れ防止に向けて道民客を対象とした割引価格の必要性に触れた。これに対し小金沢会長は「宿泊業だけでなく、飲食店や交通機関など周辺産業にも声をかけ足並みをそろえたい」と、オール北海道で取り組む考えを示した。

 宿泊業界の場合、電話やネットで予約する際に道民であることを告げてもらい、フロントで身分証の提示を受けて確認する方法などを検討する。定価の10%引きとする案などが出ており、減収分は3%程度の定価引き上げで補う。単純計算だと収益減だが、割引効果で道内客が増えれば最終的に収支均衡が見込めるという。

 また、業界ごとの事情を考慮したやり方を検討し、導入を促す考えも示した。実施可能な業種から今秋にも順次試行した後、見直しを行い、来春の閑散期に第2弾も検討する。対象を道内を訪れる日本人客全体に拡充することも検討する。

 観光施設での二重価格は、国内では一部の飲食店が試行するほか、世界遺産の姫路城を管理する兵庫県姫路市も検討している。観光業界に詳しいSOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員(37)は「観光機構のような組織的な取り組みは珍しく、北海道モデルとして全国に広がる可能性がある」と指摘し、「道内を年数回、旅する道民もおり、観光施設の安定的運営にも寄与するのではないか」と評価。日本人客との価格差については「例えば、外国人に言語別の小型ガイドシステムを渡すなど付加価値をつけることで、一定の説明はつく」としている。

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