広島県安芸高田市の石丸伸二前市長に「恫喝された」と虚偽の発言をされて名誉を傷つけられたとして、市議が石丸前市長や市に対して損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が3日、広島高裁でありました。広島高裁は、安芸高田市に損害賠償の支払いを命じた一審判決を支持し、控訴を棄却しました。
この裁判は、石丸前市長が2020年10月、市議会での別の市議の居眠りについて議会と意見交換したことを巡って、「敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝?あり」などとSNSに投稿。その後、どう喝したのは山根温子市議と議会で名指しし、翌月の市議選期間中にもSNSの投稿で言及したため、名誉を傷つけられ精神的な苦痛を受けたなどとして、山根市議が石丸前市長と市に損害賠償を求めていたものです。
去年12月、一審の広島地裁は「どう喝はなく、あったと信じるに足りる証拠もなかった」などと指摘。その上で「石丸市長はSNS上で広報活動をするに当たり、市長として職務上当然尽くすべき注意義務を尽くさず、山根市議の社会的評価を低下させ、名誉を棄損した」として安芸高田市に33万円の支払いを命じていました。
一方で一審判決は、投稿は“職務”とし、石丸前市長個人が賠償責任を負うものではないと判断していて、市側だけでなく、市議側も控訴していました。
■「裁量の逸脱が認められる」広島高裁の判断は
市側は控訴審で、「議場でのやりとりは政治的討論として行われ、市議の社会的評価を低下させない」と主張していました。
広島高裁の倉地 真寿美裁判長は、3日の判決で、「(どう喝)発言をしたのが市議であると摘示されている以上、市議会議員としての社会的評価を低下させるものであることは否定できない」と指摘しました。
その上で「議会内での発言や投稿に市長の政治的判断が含まれるとしても、裁量の逸脱が認められる」などとし、国賠法上の違法性を認めた一審判決を支持しました。
一方、石丸前市長個人の賠償責任については、控訴審でも棄却されました。
決後、記者会見した山根議員は「安芸高田市はこの判決で、認められた賠償額をしっかりと求償権を使って石丸前市長に請求を行うべきだと考えています」と述べ、自身は上告は行わない考えを示しました。
一方、安芸高田市は「判決文の内容を精査し、今後の対応を検討する」とコメントしています。
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