「利下げ祭り」傍観の債券トレーダー、FRBの出方待ち

ニューヨーク外為市場では、薄商いで相場が不安定な展開となる中、ドルが小幅下落。2022年7月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロンドン 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 主要7カ国(G7)のうち4カ国で利下げが実施されたが、国債価格が急上昇する展開とはなっていない。

地政学的な要因や財政への懸念が重しになっていることが一因だが、さらに大きな要因として、市場関係者が米連邦準備理事会(FRB)の出方をうかがっていることが挙げられる。

S&Pグローバル先進国国債指数は、インフレ抑制に向けた各国の急激な利上げを背景に2021年以降、平均で年間3%以上下落。これに対し、S&P先進国グローバルBMI株式指数は年間3.6%値上がりしている。

債券トレーダーは、株式トレーダーから嘲笑されないようもう少し在宅勤務を続けたいと考えているかもしれない。

Reuters Graphics Reuters Graphics
Reuters Graphics Reuters Graphics

  通常、利下げサイクルが始まれば、国債利回りは低下し、国債価格が上昇する。だが、これまでのところ、そうはなっていない。

カナダ銀行(中央銀行)は今月、今回のインフレ局面でG7の中銀として初めて利下げを決定。ドイツ、フランス、イタリアの政策金利を決める欧州中央銀行(ECB)も追随した。

だが、S&Pグローバルによると、カナダ国債は利下げが発表された今月5日以降のリターンが0.5%に達していない。

ユーロ圏ではECBが利下げを決定した今月6日にドイツの10年国債利回りが2.54%から2.41%まで低下したが、フランスのマクロン大統領が衝撃的な解散総選挙を発表したことを受けて、フランス国債とイタリア国債の利回りは急上昇した。ユーロ圏全体では利下げ発表以降の国債のリターンはほぼゼロとなっている。

地政学や財政に対する懸念が市場の高揚感に水を差すのは当然と言えるが、もうひとつの要因が働いている。先進国の国債は米国債との連動性が高まっているのだ。

キャピタル・エコノミクスによると、2020年以降のドイツと米国の10年物国債の相関度(0は無相関、1は完全に相関)は約0.8。1970年代は0.3前後、80年代と90年代も0.6未満だった。

背景には、FRBが本格的な利下げに踏み切るまでECBなども長期にわたる利下げに着手できないとの市場の読みがあるとみられる。

問題は米国の経済成長率とインフレ率が依然として高く、FRBが今年の利下げ回数を1回と予想していることだ。

カナダ銀行のマックレム総裁は利下げ後、「この瞬間を少し楽しもう」と述べた。株式トレーダーは総裁の助言に従っているようだ。だが、FRBが利下げ祭りに加わらない限り、債券トレーダーは物欲しげに祭りを傍観する運命にある。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

元記事を読む