中国の習近平政権が、海上での暴挙を過激化させている。中国海警局は2日夜、台湾の離島、金門島周辺で台湾漁船を拿捕(だほ)し、南シナ海では前日、フィリピン公船3隻を追跡・監視した。中国の威嚇行動を牽制(けんせい)してきたジョー・バイデン米大統領(81)が、大統領選のテレビ討論会で「自滅」したため、増長しているのか。今後、沖縄県・尖閣諸島などにも攻勢を強める危険性がありそうだ。
台湾海巡署(海上保安庁に相当)や台湾メディアによると、中国海警局に拿捕されたのは澎湖諸島に船籍のある台湾漁船。台湾人船長や外国籍の5人が乗船していた。
船主から海警船2隻の強制検査を受けているとの連絡を受け、海巡署の船舶が現場へ急行して釈放を呼びかけたが、中国側が聞き入れず、漁船は連行された。海巡署は中国側に対して「政治的操作」をやめ、船員の即時釈放を求めるとしている。
金門島周辺の海域では今年2月、台湾当局の取り締まりを拒否した中国漁船が転覆して2人が死亡した件を受け、海警局が周辺海域のパトロール強化を発表し、台湾の観光船の臨検に踏み切るなど緊張状態が続いていた。
中国海警局の過激行動は、フィリピンにも続いている。
海警局は2日、南シナ海のサビナ礁周辺で前日、フィリピン公船3隻を追跡・監視したと発表した。中国は、サビナ礁を含むスプラトリー(中国名・南沙)諸島に主権を有していると主張し、「フィリピンによる主権侵害に断固反対する」と表明した。
南シナ海では6月17日、フィリピン海軍の補給船と中国海警局船が衝突し、中国側による攻撃的行動でフィリピン兵7人が負傷、1人は指を切断する重傷を負ったばかり。
中国の暴挙拡大の背景を識者はどうみるのか。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「米軍の最高司令官であるバイデン氏が、テレビ討論会でスピーディーな判断ができなくなっていることを知らしめた。中国は、来年1月まで続くバイデン政権の間に、できるだけ既成事実をつくろうと攻勢に出ているのだろう。尖閣諸島も中国に狙われているとみるべきで、日本も踏ん張らないといけない」と話した。