9月に想定される自民党総裁選を巡り、石破茂元幹事長(67)が立候補の意向であることが28日、分かった。複数の党関係者が明らかにした。世論の人気が高い石破氏は、総裁再選を目指す岸田文雄首相にとって、有力な対抗馬となり得る。通常国会の閉幕から1週間足らずで、党内の「ポスト岸田」をにらんだ動きが活発化してきた。
石破氏は28日、総裁選の対応について札幌市で記者団に「厳しい情勢の中、自分が首相になればどうするかを考え立候補するのか、考えが最も近い人に1票を入れる(のか)。そういうことは日々考えている」と含みを持たせた。同氏周辺は「まだ表で言うのは早い」と述べ、出馬を前提にしていることを暗に認めた。
石破氏は、衆院鳥取1区選出の当選12回。防衛相、農林水産相を歴任するなど政策通で知られる。「次の首相」を問う報道各社の世論調査ではトップの常連だ。
ただ、時の政権への批判も辞さぬ姿勢はしばしば、党内であつれきを生んだ。麻生政権下の2009年には、閣僚の立場で麻生太郎首相(当時)に退陣を迫り、溝はいまだ深い。
近年は「非主流派」に甘んじてきた。15年に立ち上げた石破派が、退会者の続出で存続を断念せざるを得なくなるなど、党内基盤の弱さはなお課題だ。
政府関係者は「非主流派の石破氏が総裁になれば、党が変わったと印象付けられる」と指摘。一方で、石破氏に近い中堅議員は「出馬できる環境が整っていない」と述べ、20人の推薦人集めに難航する可能性があるとの見方を示す。
岸田政権下で非主流派の筆頭格と目される菅義偉前首相とは節目で意見交換。その後ろ盾を得られるかが、石破氏の浮沈を分けるポイントになりそうだ。
もっとも、菅氏がリーダー候補の一人と評価し、石破氏や小泉進次郎元環境相と合わせ「小石河連合」と称される河野太郎デジタル相(61)も、出馬に意欲を示している。総裁選までには紆余(うよ)曲折も予想され、石破氏は今後、党内情勢などを見極めながら最終判断する構えだ。