ウクライナ「領土保全の尊重」など採択 和平サミット共同声明、インドや南アは見送り

16日、スイスで開かれた「世界平和サミット」の全体会合で演説するウクライナのゼレンスキー大統領(右)(ロイター)
産経新聞

【ファサーノ(イタリア南部)=黒瀬悦成】ロシアに侵略されたウクライナが提唱する和平案の実現に向けた「世界平和サミット」が15、16日にスイス中部ビュルゲンシュトックで開かれた。会合はウクライナの「領土保全の尊重」などをうたった共同声明を16日に採択して閉幕。八十数カ国・機関が声明を支持したが、インドや南アフリカなど一部の新興・途上国が加わらなかった。

ロイター通信によると声明の承認を見送ったのは、他にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、タイ、インドネシアなど。一方、トルコやフィリピン、アルゼンチンなどが加わった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日の閉幕に際し、会合の成果が「平和に向けた第一歩」になると述べた。15日の会合冒頭には「世界が『公正に基づく平和』の実現に近づく」と演説し、国際社会の結束を訴えていた。

共同声明は、ゼレンスキー氏が2022年11月に発表した10項目の和平案「平和の公式」に関し、「核の安全」「食料安全保障のための航行の自由」「捕虜の解放とロシアに連れ去られた子供の返還」の3項目を盛り込んだ。「ウクライナへの核使用の威嚇を一切容認しない」「ウクライナの主管の下でザポロジエ原発の安全な稼働を確保する」などと明記した

スイス政府によると、会合には計100の国と国際機関が代表を派遣した。日本からは岸田文雄首相が出席した。

米国からハリス副大統領が出席。会合前にゼレンスキー氏と会談し、15億ドル(約2360億円)以上の追加人道支援の実施を伝えた。

紛争当事国であるロシアのプーチン大統領は招待されなかった。主催国スイスのアムヘルト大統領は開幕前の声明で、和平協議の進展にはロシアの関与が必要だと指摘し、国際社会にロシアとウクライナの直接対話に向けた環境整備を進めるよう促した。

一方、ウクライナ外務省は14日、プーチン氏が同日発表した、ロシアが一方的に併合した4州からのウクライナ軍の撤兵や北大西洋条約機構(NATO)への加盟断念などを条件とする「和平案」について、即座に拒否の意向を表明した。

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