ウクライナ軍は5月中旬、ロシア占領下クリミアのセバストポリ近郊のベルベク航空基地に向けて米国製のATACMS弾道ミサイルを10発撃ち込んだ。
そして、ウクライナ側の作戦立案者が現実的に期待できる限り最大の損害をロシア側に加えた。地上で撮影された写真から、重量1.5t前後のATACMSから各数百個ばらまかれた擲弾サイズの子弾は、S-400地対空ミサイルシステムのレーダー1基と発射機2基を撃破したことが確認されている。さらに駐機中の戦闘機4機にも損害を与えたもようだ。
ベルベクとセバストポリにはロシア空軍とロシア海軍黒海艦隊の残存艦艇にとって重要な基地があるので、ロシア側が射程400kmのS-400の破壊された装備をただちに補充したのは当然だ。
だが、ベルベクの基地周辺のS-400は11~12日の夜に再びウクライナ軍によって攻撃された。使われた兵器が何だったのかは現時点で不明だが、おそらく5月の攻撃と同じ射程300kmのATACMS「M39A1型」だろう。
ウクライナ国防省は、ベルベクとセバストポリ近辺のS-400計2基とベルベク近辺のより射程の短いS-300地対空ミサイルシステム1基が攻撃されたと報告し、S-400とS-300のレーダーが1基ずつ撃破されたと主張している。さらに「3基目のレーダーについて情報を確認中」だという。3基が配備されていた3カ所すべてで「弾薬の爆発音が記録されている」とも付言している。
ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は11日と12日の作戦状況評価で「攻撃には少なくとも10発のATACMSミサイルが使用され、ロシア側の防空システムは1発も迎撃できなかった」と述べている(編集注:ただ、攻撃されたのは「ジャンコイ近辺のレーダー基地とS-400ミサイルの備蓄、チョルノモルシケとイェウパトリヤ付近のS-300ミサイルシステム2基」としており、別の攻撃の可能性もある。ベルベクとセバストポリはクリミアの南東部、ジャンコイは北部、チョルノモルシケとイェウパトリヤは北東部に位置する)。