(ブルームバーグ): 証券取引等監視委員会は14日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券会社2社に対して行政処分を出すよう金融庁に勧告したと発表した。2019年から23年にかけて銀行と証券会社の間で同意を得ずに顧客情報を共有するなどの行為が認められ、金融商品取引法に違反していると判断した。
発表資料によると、違法行為が認められたのは三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社。
三菱UFJ銀行の役職員は三菱モルガンとの間において、法人顧客から情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、非公開情報の授受を少なくとも10回行っていた。同様に三菱モルガンの役職員は三菱UFJ銀とモルガンMUFGとの間で13回、モルガンMUFGの職員は三菱モルガンとの間で3回行っていた。
このうち、三菱UFJ銀の当時の専務執行役員が一部の非公開情報について自ら提供している状況が認められたほか、三菱モルガンの副社長が、三菱UFJ銀から一部の非公開情報を自ら受け取った上で、引受契約の勧誘を行っていたことも認められた。
監視委はこうした行為について、銀証連携ビジネスの推進にあたり、法令順守意識が希薄であることに起因すると指摘した。
金商法では、顧客が不利益を被らないよう、同意がないまま銀行と証券会社間で情報共有することを禁じており、ファイアウオール(FW)規制と呼ばれる。2022年に一部の規制が緩和され、3メガバンクグループでは銀証連携による大企業向け営業が進んでいた。ただ、22年に判明した三井住友フィナンシャルグループ傘下企業間でのFW規制違反に続き、業界トップグループが今回処分勧告を受けたことで今後の規制緩和の流れが停滞することも懸念される。
また、銀行が有価証券取引を勧誘することを禁じる規定に反して、三菱UFJ銀が有価証券の引き受けなどに関して、系列証券を引受先や割当先とするような交渉や勧誘行為を少なくとも28回行っていたという。当時の三菱UFJ銀の代表取締役にも報告されており、同取締役が不適切な勧誘行為を認識していた状況も認められた。