ゴールドマンに4.7億ドル誤送金、破綻寸前アルケゴスに決定的な一撃

ビル・フアン被告 Photographer: Alex Kent/Bloomberg

米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントは巨額のマージンコールに追い詰められていた2021年3月、ウォール街各社の取引口座から余剰資金を引き出し始めた。同社は当時、ゴールドマン・サックス・グループに約4億7000万ドル(約740億円)を預けていた。

  しかしアルケゴスのスタッフは資金を引き出すのではなく、誤ってゴールドマンに送金してしまった。ゴールドマンは直ちには返金に応じなかった。資金確保に奔走していたアルケゴスは、このミスで10億ドル近い不足に陥り、経営破綻に至った。

  このエピソードは最終的に取引相手に100億ドルの損害を与えたアルケゴスの創業者、ビル・フアン被告の公判で明らかになった。同被告は証券詐欺や価格操作などの容疑で起訴されている。

  アルケゴスのリスク管理責任者だったスコット・ベッカー氏は、検察側の証人として証言台に立ち、フアン被告の弁護士から反対尋問を受けた。

  ベッカー氏はゴールドマンへの誤送金について、アルケゴスのオペレーションチームの一員が2021年3月24日に行ったと証言。「このミスのせいで、バンク・オブ・アメリカ(BofA)での口座残高は約10億ドル減った」と述べた。

  アルケゴスは当時、あらゆる取引先から余剰資金を引き出そうとしていた。ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、ジェニファー・ミランダ氏は先週の証言で、ベッカー氏に電話した当時の様子を語った。

  「何が緊急なのか。何があった」と不思議に思ったミランダ氏は、ベッカー氏からアルケゴスには十分なキャッシュがあるとの説明を受けた後、2億4000万ドルの引き出しを認めたという。

  ベッカー氏はこれについて、取引量を増やすために銀行にうそをつき、マージンコールの時間を稼ぐよう指示されたと証言している。アルケゴスは2021年3月25日に130億ドルのマージンコールを想定していたと同氏は証言。その想定にゴールドマンが含まれていたかどうかは不明だ。

  ゴールドマンはアルケゴス関連のポジションをいち早く手放すことができたため、この大規模な金融不祥事による傷は軽微で済んだ。アルケゴス最大の取引相手はクレディ・スイスで、フアン被告との取引で55億ドルの損失を出したことが昨年の破綻につながった。

原題:Archegos Sent Goldman $470 Million in Error Amid Collapse(抜粋)

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