【パリ五輪】阿部一二三が見せつけた兄の強さ、妹・詩の思いを背負い パリ五輪柔道男子66キロ級金メダル

ブラジル選手に勝利した阿部一二三=シャンドマルス・アリーナ(水島啓輔撮影)
産経新聞

兄の強さを世界に見せつけた。柔道男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)が日本柔道史上8人目となる連覇を達成。妹の阿部詩(同)との「きょうだい同日連覇」を目指したが、妹はまさかの2回戦敗退。「『僕が金メダルを取らなくて誰が取るんだ』と妹の思いも背負って、最後まで戦い抜こうと覚悟を決めた」と力を込めた。

初戦を前にしたウォーミングアップ中、モニター画面には妹が敗戦後に泣き崩れる姿が映し出された。「驚いたし、泣きそうにもなった」。その瞬間は心を揺さぶられたが「兄として、絶対に妹の分までやり切る。泣くのは今じゃない」。すぐに画面から背を向け、自身の調整に戻った。

想定外の事態に直面しても、畳に上がって敵を前にすると動揺は感じさせなかった。「絶対に足をすくわれないように、妹の負けを見て(気持ちが)より引き締められた」。全4試合で投げを決めてポイント奪う圧巻の優勝。準決勝からは妹もスタンドで見守る中、兄の矜持を示した。

試合後は妹とわずかに顔を合わせる時間があり「おめでとう」と祝福された。「(会ったのは)一瞬だけ。妹も落ち着いてから話をしようかなと思う」。東京五輪から3人、世界最強と称され続けてきたた二人の明暗は分かれたが「これからも一緒に頑張っていこうと前向きな言葉をかけたい」。最後は優しい兄の顔をのぞかせた。(大石豊佳)

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