バングラデシュで、学生による反政府運動が暴動に発展している。政府は19日、全国に夜間外出禁止令を発令した。首都ダッカではこの日、新たに35人が死亡した。
バングラデシュ政府は先に、1971年の独立戦争の退役軍人の家族を、公務員採用で優遇する案を発表。これに反発した学生らのデモが激化し、各地で暴動が起きている。
19日には、ナルシングディ県の刑務所が襲撃され、受刑者数百人が逃走した。これを受けて首相官邸は、夜間外出禁止令を発した。また、政府報道官は声明で、治安回復のために軍が投入されると発表した。
これまでにこの暴動で67人が死亡したとされている。しかし、電話やインターネット回線がつながらず、通信がほぼ完全に遮断されているため、正確な死者数を評価するのは難しい。
バスや列車の運行も停止しており、ダッカからの写真では、暴徒対応の装備を着けた大勢の警察官が路上にいるのが写っている。
バングラデシュ全土の学校や大学も、追って通知があるまで閉鎖された。
しかし抗議者らは「完全シャットダウン」を続けることを誓い、街中の道路を封鎖している。
ダッカ大学前では19日、学生たちが 「実力、実力」、「兄弟たちの流した血を無駄にさせない 」と唱和した。抗議には学生の親たちも数多く参加した。
学生たちは、優遇措置は差別的だと主張し、実力に基づいた採用を求めている。優遇制度については、今年1月の選挙で4期目となったシェイク・ハシナ首相を支持する親政府グループの家族に不公平な利益をもたらしているとの批判が出ている。
イスラム主義政党が組織したデモ行進は、催涙ガスやゴム弾、閃光手りゅう弾で包囲された。
抗議らはまた、19日にナルシングディの刑務所を襲撃。数百人の受刑者が街中に逃げ出したと報じられている。この件については、複数の目撃者がBBCバングラ(ベンガル語)に証言している。
主要野党のバングラデシュ国民党も抗議を呼びかけている。亡命中のタリケ・ラフマン議長代理はソーシャルメディアで「心優しい学生たち」を支援するよう人々に求めた。
同党はまた、幹部の一人であるルフル・カビル・リズビ・アフメド氏が身柄を拘束されたと発表した。警察は、リズビ氏の逮捕理由を明らかにしていない。
抗議運動を話し合いで終わらせようという試みは、今のところ失敗に終わっている。
アニスル・ハク法相はBBCバングラに対し、政府は協議に応じると述べ、「抗議者側も協議に参加するか話し合っているはずだ」とした。
しかし、BBCが18日に取材した学生のナヒド・イクバルさんは、現時点では協議に参加することは考えていないと語った。
「政府は一日に多くの人を殺した。今の状況では話し合いに参加することはできない」
これに先立ち、ダッカ警視庁のシャフィクル・イスラム長官はBBCに対し、18日の暴動を受けて、当局は人命と財産を守るため、市内での集会を禁止することを決定したと述べた。
これとは別に、警察はBBCバングラに対し、19日に2人が死亡したこと認めた。
警察によると、18日には警官100人が負傷した。また政府閣僚によると、政府庁舎の外に駐車していた数台の車両が放火されたという。
衝突はダッカだけにとどまらず、26県で発生が報告されている。
国営放送BTVを占拠し放火したデモ隊は、19日の朝までに退去したが、同チャンネルは放送を再開していない。
BBCバングラによると、18日に同放送局内で起きた火災で編集局、スタジオ、食堂などが被害を受けた。
(追加取材:BBCバングラ)
(英語記事 Bangladesh imposes curfew as protests continue)