【シドニー時事】18日閉幕した「太平洋・島サミット」に参加した太平洋島しょ国の多くは、インフラ整備などで中国から大規模な援助を受けている。
だが、債務が膨らんで返済が困難になり、権益を中国に押さえられる「債務のわな」に陥るリスクへの懸念も高まっている。
ソロモン諸島は2019年に台湾と断交して中国と国交を結んだ。世界銀行によると、ソロモンの対外債務は18年に3億2000万米ドル(約500億円)だったが、22年に5億米ドル(約780億円)に拡大。港湾やスタジアムなどの整備で中国の融資を受けたためだ。12日のマネレ首相訪中時には1億7000万ソロモンドル(約32億円)の財政支援も決まった。
同様に19年に中国と国交を樹立したキリバスも中国から多額の融資を受ける。バヌアツでは7月初旬、中国の資金で建設された大統領官邸などが完成した。23年5月に米国と防衛協力協定を締結したパプアニューギニアも中国からの経済援助を歓迎している。
一方、南西アジアのスリランカは債務を返済できず、港湾の運営権を中国国営企業に握られた。ソロモンの対中債務が焦げ付いた場合も、中国が港湾などの権益を押さえる可能性が大きい。しかも中国は22年にソロモンと安全保障協定を結んでおり、これを根拠に軍事拠点化を図るのではないかとの警戒感が西側諸国に広がっている。
木材などを輸出するソロモンにとって中国は最大の貿易相手国。オーストラリアのシンクタンク、ローウィー国際政策研究所のミハイ・ソラ氏は論文で「もしマネレ氏が中国の戦略的野心を阻害する形で関係を後退させれば、(禁輸など)望まぬ結果を招く。経済・安保の協力を後退させるつもりはなさそうだ」と指摘した。