難民申請激増で「保護費」急増3億円、予算足りず 就労OK収入高い「難民ビザ」 「移民」と日本人

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産経新聞

難民認定申請者のうち生活困窮者らに国が支給する「保護費」の受給者が昨年度、658人に急増し総支給額が前年度の約1・7倍の3億2700万円にのぼったことが15日、外務省のまとめでわかった。1人当たりの平均年額は約50万円となる。同省は、難民申請者が1万3千人超に激増したことが影響したとみている。一方で、申請者の多くは難民申請者に与えられる正規の在留資格で就労しており、「保護費より稼げる」のが現状という。

■4人世帯で最大月額34万円

外務省によると、保護費は1983(昭和58)年に始まった国の措置制度。難民認定の1回目の審査期間中、収入がないなど「生活困窮の度合いが高く衣食住に欠けるなど、保護が必要と認められる」人が対象で、国内の生活保護に準じるものという。生活費のほか、必要に応じて住居費を支給、医療費も原則保険適用内で実費を支給する。

生活費は生活保護の水準を参考に定められ、12歳以上は月額7万2千円、12歳未満は半額。住居費は単身者で月額4万円、一世帯当たりの上限は6万円となる。これにより、支給額の合計は最大で単身者が月額11万2千円、4人世帯なら同34万8千円となる。

2023年度の保護費受給者は658人にのぼり、前年度の204人から約3・2倍に急増。これに伴い保護費も当初予算の2億3100万円では足りず、補正予算に計上して総額3億2700万円となった。

■フルタイムの就労も

背景には、コロナ明けにより難民申請者が前年の約3700人から約3・7倍の約1万3800人に激増したことがある。外務省は「予算を増やさざるを得ない状況」と説明。今年度の当初予算は前年度を上回る2億5900万円を計上している。

一方で、約1万3800人の難民申請者のほとんどは保護費を受給していない。多くは難民認定手続中の場合も与えられる「特定活動」という在留資格により、原則フルタイムでの就労も認められている。このため就労目的にもかかわらず難民申請する人が後を絶たず、俗に「難民ビザ」とも呼ばれているという。

関係者によると、保護費を受給するよりも「難民ビザ」のほうが多くの収入を得られるため、大半の難民申請者は自活を選択し、難民認定の審査を待つ間に就労しているのが実態という。

出入国在留管理庁の統計によると、こうした「特定活動」の該当者は昨年末時点で5380人。最も多いのはトルコ国籍者で1147人と2割超を占め、大半はトルコの少数民族クルド人とみられる。

クルド人らは家族ぐるみで難民申請しているケースも多く、その場合は両親、特に父親の稼ぎで生計を立てているという。

一方、不法滞在などによる強制送還を拒みながら入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免者」の場合は、不法就労も少なくない。クルド人が集住する埼玉県川口市の奥ノ木信夫市長は仮放免者の就労を可能にする制度の創設を国に要望している。

■民主党政権で難民申請者激増

難民申請者は2011年の約1800人からピーク時の17年は約2万人に激増。一方で保護費は2011年度から2020年度までの10年間は一貫して減少している。

関係者によると、2009年5月、外務省の保護費が枯渇し、100人以上が支給を打ち切られたことがあり支援団体などから批判が集まった。これを受け、同年9月に発足した民主党政権下で翌10年4月、難民申請者に一律に就労を認める運用を始めたという。

その結果、「難民申請すれば働ける」と申請が激増する一方、保護費の受給者は減少した。しかし、この運用が終了した18年1月以降は申請者自体が激減したという。

保護費をめぐっては不正受給や虚偽申請も問題化。12年2月には、収入や預金があるにもかかわらず無収入などと偽って保護費をだまし取ったとして、埼玉県川口市に住むトルコ国籍の工員の男が逮捕された。

19年3月には、同様の容疑で千葉県市川市に住むカメルーン国籍のクラブ勤務の女が逮捕された。

外務省から保護費支給事業を受託する公益財団法人アジア福祉教育財団の難民事業本部(東京)は「支給に当たっては受給希望者と面談するなどして審査している」と説明。支給は現金で行われるため、「支給開始後も毎月、保護費を受け取りに来る際に生活状況を確認してから渡している」としている。

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