「花火の燃えカス」問題で花火大会中止が続々 「被害総額1200万円」「苦渋の決断」の背景は?

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 7月8日、千葉県船橋市は「船橋港親水公園花火大会」の開催見送りを発表した。同花火大会は、長年市民に親しまれてきた。地元に住む女性は、こう残念がる。

「打ち上げ場所との距離が近くて、迫力ある花火が魅力でした。特に昨年はいい観覧席から見られて、とても楽しかった。駅から会場も近いし、仕事が終わってから行けると今年も楽しみにしていたのに」

 コロナ禍明けで4年ぶりに再開された昨年は、約4000発が打ち上げられ、会場は6万人の観客でにぎわった。

■燃えカスが落下して…

 ところが、打ち上げ花火の燃えカスが、港に係留されていたプレジャーボートなどに落下。総額1200万円という被害が生じたという。花火大会を主催する「ふなばし市民まつり実行委員会」は港での開催継続は困難と判断、今年度の開催は中止を決めた。

 中止が報道されると、実行委員会の事務局である同市商工振興課には問い合わせが相次いだ。同課の尾崎晃一郎係長は語る。

「『場所の変更は仕方ないにせよ、今後も花火大会を続けてほしい』という声が多く寄せられました。花火大会を楽しみにされている方が大勢いらっしゃることを実感しました」

■シートで覆うのに540万円

「花火の燃えカス」とは、花火の火薬を覆う丈夫な紙で作られた容器「玉皮」の燃え残った破片のこと。花火を打ち上げれば必然的に飛散する。火のついた状態で落下することもある。

 花火を打ち上げる際は、花火の直径に応じて打ち上げ地点からの安全距離(保安距離)が設けられる。

「我々が打ち上げる2.5号玉の花火の場合、半径65メートルの保安距離の円内は基本的に何もない状態でないと、県から打ち上げ許可は下りません」(尾崎係長)

 例年、港のほぼ中央に台船を停泊させ、打ち上げ地点にしてきた。保安距離のすぐ外側にはボートやヨットが係留する「船橋ボートパーク」があり、風向きや風力によっては花火の燃えカスが落下する恐れはある。実行委員会は花火大会のたびに業者に依頼して船を防炎シートで覆ってきた。昨年は係留された船が200隻近くあり、シートのレンタル代と作業費を合わせた費用は約540万円にもなった。

 長かったコロナ禍が明け、全国各地で花火大会が復活した2023年。ところが今年、再び中止を決定した花火大会がいくつもある。原因の一つは「花火の燃えカス」だという。

「ボートやヨットにはさまざまな付属品があり、完全に全体を覆うことは難しい。昨年はシートのすき間から燃えカスが入ってしまった」(同課の石崎博課長補佐)  燃えカスで、計7隻の船に焼け焦げが生じた。高価な船だと1隻数千万円もするため補償額がふくらみ、最終的に修理代として計1200万円が加入していたイベント保険から支払われた。 「過去にも花火の燃えカスによる被害はありましたが、昨年ほど大きな被害ははじめてでした」(石崎課長補佐)

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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