FRBの「忍耐強さ」、解除は秋口か 綱引き続くドル円相場=尾河眞樹氏

コラム:FRBの「忍耐強さ」、解除は秋口か 綱引き続くドル円相場=尾河眞樹氏
日本のゴールデンウィーク真っ只中に、政府・日銀による覆面介入とおぼしき動きがみられ、ドル円は160円台から151円台まで急落。しかし、その後じりじりと値を戻し、157円付近で膠着している。尾河眞樹氏のコラム。者ワシントンのFRB。2019年3月撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

[東京 30日] – 日本のゴールデンウィーク真っ只中に、政府・日銀による覆面介入とおぼしき動きがみられ、ドル円は160円台から151円台まで急落。しかし、その後じりじりと値を戻し、157円付近で膠着している。ドル円が高値圏で膠着状態となっているのは、1)覆面介入がそれなりに効力を発揮している、2)米連邦準備理事会(FRB)がインフレを見極めるステージにあり、様子見を決め込んでいるーーの2点が挙げられよう。
<ドルの押し下げ介入、焦点の介入実績>
1点目の「介入」については、財務省が5月末に公表する介入実績の発表が待たれるところだが、今回の介入は、単にボラティリティーの急騰を抑える目的の「スムージングオペレーション」というよりは、ドル円の水準を押し下げるべく、大量の円買い・ドル売りを実施する「ドル円の押し下げ介入」のように筆者には見えた。
1度目の160円台の後、2度目の介入らしき動きがみられたのが157円付近だったので、投機筋も足元の157円台からドルを買い上げるのは躊躇しているように思われる。また、介入実施のアナウンスメントがなかった分、不透明感が強く、「ひょっとするとまた近々介入があるかもしれない」と思うと、円売りポジションをキープするのにも不安が伴う。

今月の介入実績が仮に2022年の9兆円を上回れば、日本の通貨当局の本気度が示され、今後しばらく介入警戒感がドル円の上値を抑えるだろう。
反対に、小規模にとどまれば、投機筋にむしろ安心感を与え、再び円売り圧力が強まる可能性もある。こうした心理戦が微妙なバランスとなって、足元のドル円相場の膠着につながっているとみている。
政府からの圧力があってか、日銀の植田総裁の為替に関する発言が変化している。市場では日銀が円安対応で早期に追加利上げや国債買い入れ減額に動くとの警戒から円金利が上昇しているが、為替への影響は今のところ限定的だ。おそらく0.25%の追加利上げでは、円相場への影響は限定的との見方が優勢なのではないか。
<FRBの利下げは9月から、目先は高金利維持>
2点目のFRBについては、5月14日にパウエル議長が行ったアムステルダムでの講演が影響しているのではないか。同議長は、金融引き締め効果を見極めるのに「少なくとも3カ月のデータが必要」と述べたうえで、高金利政策を「忍耐強く(patient)」続ける、との見解を示した。

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