【ソウル時事】韓国を訪問した岸田文雄首相は26日午後(日本時間同)、ソウルで中国の李強首相と約1時間会談した。岸田氏は東京電力福島第1原発の処理水放出を受けた中国による日本産水産物の輸入禁止について、即時撤廃を要求。中国軍による台湾周辺での軍事演習を踏まえ、「動向を注視している。台湾海峡の平和と安定は極めて重要だ」と伝えた。
両首脳は、昨年11月に岸田氏と習近平国家主席が確認した「戦略的互恵関係」の包括的推進と「建設的かつ安定的な関係」の構築に基づき、両国が抱える懸案の解決を図ることで合意した。李氏は「台湾は中国の核心的利益の中の核心で、(越えてはならない)レッドラインだ」と述べた。
福島第1原発の処理水海洋放出に関しては、事務レベルでの協議を加速することで一致した。中国国営中央テレビによると、李氏は会談で「核汚染水放出は全人類の健康に関わる」と非難。「日本側が責任と義務を確実に履行するよう望む」と求めた。
会談の冒頭、岸田氏は「日中関係を安定させることは地域や国際社会にとって有益だ」と指摘。李氏は「行き違いをマネージし、建設的、安定的な関係の構築に努力するよう希望する」と語った。
両氏は昨年9月、インドネシア・ジャカルタで立ち話を行ったが、本格的な会談は初めて。
岸田氏は沖縄県・尖閣諸島の情勢や日本周辺での中国の軍事活動に「深刻な懸念」を表明。東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置した海上ブイの撤去を要求した。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応で、岸田氏は中国が「重要な役割」を果たすよう促した。
中国で拘束された日本人の早期解放や、短期ビザ免除の再開も求めた。両氏は「正当な企業活動が保障されるビジネス環境」の確保で一致した。岸田氏は、両国閣僚による「ハイレベル経済対話」などを通じ、協力拡大を進めることを提案した。