法廷で裁判官が「日の丸バッジ」の着用を禁じたのは権限の乱用だとして、男性3人が国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は22日、男性側の請求を棄却。バッジを「単に国籍や民族的出自を表明するにとどまらない」として、メッセージ性を有するものと扱った裁判官の判断を適法とした。同様の訴訟は北朝鮮による拉致被害者の救出を願う「ブルーリボンバッジ」でも提起されたが、違法性を認めない司法判断が続いている。一連の訴訟の背景に何があったのか。
「正当な法廷警察権の行使」
日の丸が〝否定〟されたのは令和3年4月、男性らが大阪高裁で民事訴訟の控訴審を傍聴しようとしたときだった。書記官から「メッセージ性がある」との理由で胸元の日の丸バッジを外すよう指示された。その後の期日でも禁止令は続いた。
傍聴しようとしたのは、在日韓国人女性が、職場で民族差別的な文書を配布されたとして不動産会社に損害賠償を求めた訴訟。この訴訟では1審が審理された大阪地裁堺支部でバッジを巡るトラブルが起きていた。
審理の途中から、女性側の支援者が「STOP!HATE HARASSMENT」と書かれた缶バッジを着けるようになり、これに対抗する形で不動産会社側の支援者が富士山などが描かれた缶バッジを着用。堺支部は双方に対し、メッセージ性があるバッジを外すよう要請した。
この要請後、女性側の支援者が不動産会社側にブルーリボンバッジも外すよう求めて、いさかいが発生した。堺支部はブルーリボンも「メッセージ性があるバッジ」に含まれると判断。法廷の秩序を守る目的で裁判官に与えられた「法廷警察権」に基づいて着用を認めなかった。
今月22日の判決。松本展幸裁判長は、不動産会社訴訟を巡る経緯に照らせば、日の丸バッジの着用は「在日韓国人女性側への批判的な意思や、不動産会社側に賛同する意思を表明すると解される行為」と言及。いさかいを未然に防止するための措置で「違法な公権力の行使とは認められない」と判示した。原告側は控訴する方針。
日の丸はときに個別訴訟への批判・賛同の意思表示になりえるとの司法判断といえるが、大阪地裁や大阪高裁が入る建物の屋上では、日の丸がはためいている。