球威の戻らない状態が今後も続くならば、あと3勝で達成する日米通算200勝は遠い道のりとなる。楽天の大功労者でもある田中将大投手(35)が、プロ人生で最大のピンチに立たされている。
いまだ1軍登板なし
星野仙一監督時代の2013年に無傷の24連勝を飾るなど、楽天を球団創設9年目で初のリーグ優勝、初の日本一に導いた田中に異変が起きている。今シーズンが32試合消化(8日現在=14勝17敗1分けでリーグ5位)した時点で、1軍登板はゼロ。3月20日のイースタン・リーグ、DeNA戦(横須賀)で3回⅓、63球を投げて5安打3失点でマウンドを降りて以降、一度も登板がないのだ。
4月中旬に予定されていたイースタン・リーグでの登板は11日に白紙に。田中はその後、「自分と向き合いながら…。時間はかかるかもしれないが、やれることをやる」とコメント。しかし、いまだに次回登板のメドも明らかになっていない。直近の田中の投球を見ていたプロ野球関係者は「とにかく球が走っていない。全盛期の直球が影を潜めて、まるで直球がチェンジアップのようだった。肘の状態が万全ではないのかもしれない」と話した。
「大台」到達間近も
田中は7勝11敗に終わった昨季終了後、右肘のクリーニング手術を受けた。術後の経過は良好で、今春のキャンプは1軍スタート。2月24日、オープン戦の中日戦(北谷)で復帰登板を果たし、3月6日の阪神戦(甲子園球場)、同13日のオリックス戦(静岡)に登板。イースタン・リーグにも投げて順調に階段を上がっていると思われたが、登板予定を白紙に戻して以降は音沙汰がない。
精神的なショックが体調や投球に影響を及ぼしているのでは…という指摘もある。田中は1月21日、減額制限を超える45%ダウンの年俸2億6千万円プラス出来高払いの単年契約を結んだ。ヤンキースと総額1億5500万ドル(当時のレートで約161億円)の7年契約を終え、21年に楽天に復帰したときの年俸は9億円。それが2年連続の不振(21年=4勝9敗、22年=9勝12敗)で23年には4億7500万円に減額し、そこからまた2億1500万円のダウンとなった。楽天ではわずか3シーズンで6億4千万円の減額。ヤンキース最終年となった20年の年俸は2300万ドル(同約24億2千万円)で、4年前との比較では20億円超も年俸が下落したことになる。
それでも周囲からは「今の成績なら2億円でも払い過ぎだ」という辛辣(しんらつ)な声が飛んでくる。球界関係者は「田中ほどの選手でもメンタルをやられるのでは?」と心配している。加えて全盛期のように腕が振れず、球威が戻らないとなれば、あと3勝に迫った日米通算200勝の達成さえもかすみがかかってくる。
もうひと花咲かせて
楽天にとって、チームを初の日本一に導いた田中は球団最高の功労者だ。新人王に始まり、タイトルは最多勝と最優秀防御率をともに2回。最優秀選手賞、沢村賞にも輝いた。ポスティングシステムを利用してヤンキースに移籍し、メジャーでも78勝をマーク。7年契約が終了すると迷わず古巣の楽天に復帰した。ところが、このところチームの中から「田中が浮いている」という怪情報まで流れているのはどうしたことか…。
どんな選手でもいつかは衰える。しかし、外部からやってきた選手と球団の功労者では晩年の扱いが違うのは当たり前だろう。球団には田中に寄り添ってもらいたい。北海道・駒大苫小牧高時代から日本球界を席巻してきたマー君にはもう一度、花を咲かせてほしい。(金額はすべて推定)
引用元記事:産経新聞